私立中学・高校へ行こう朝日入試相談会情報

偏差値は集団の中での
相対的な位置を表すもの

受験では避けて通れない指標の一つ「偏差値」。便利な指標であると同時に、たくさんの誤解を受けている指標でもあります。たとえば「○△□中学校の偏差値は55」と言ったとき、○△□中学校はどのぐらいの難易度だと思いますか?
 実は、この文章では○△□中学校の難易度はわかりません。「え? 偏差値55 というとちょっと難しいけど頑張れば入れる学校って意味じゃないの?」と思った方、偏差値という指標を正しく理解されていないかもしれません。
 偏差値は「ある集団の中」での「平均からの離れ具合」を表します。そのため、偏差値が意味をなすには「どの集団(=模試)での偏差値なのか」が明らかである必要があります。受験した集団が異なる、A 社の模試とB 塾の模試では同じ偏差値55 でもそれぞれ意味が違ってくるのです。

共通テストよりも
東大合格の方が簡単?

同じ学校でも、中学入試での偏差値と高校入試での偏差値が大きく異なることは少なくありません。
大まかに言うと、中学入試での偏差値よりも高校入試の方が10~15 ほど高くなるようです。
 このことを「同じ学校なら中学から入った方が易しい」と中学受験のメリットのように紹介している解説も見かけます。しかし、これはもっともよくある誤解の一つです。
 中学入試は、同世代のうち、関西圏ではおよそ10 パーセント程度の人が受験に臨みます。一方、高校入試は中高一貫生を除く同世代のほぼ全員が受験します。偏差値を算出する集団が全く異なるわけです。当然ながらどちらが難しいのか比べることはできません。
 共通テストの全受験者で偏差値を出すと70 を軽く超える東京大学合格者も、東大合格者だけを集めて偏差値を計算し直すと40 台の人もいます。30 台だっているかもしれません。先の誤解は、比較できない二つの偏差値を元に「共通テストよりも東大入試の方が易しい」と言っているようなものなのです。

たった1点で偏差値80?

次に「平均からの離れ具合」についてです。偏差値は「平均点との差」を「標準偏差」で割り、10 をかけ、50 を足した数値です。

最後に50 を足すのはちょうど平均点の人の偏差値を50 にするためです。10 をかけるのはテストの点数のようなわかりやすい値にするため。この2つは数値を整えるためで本質的な意味はありません。
 重要なのは「平均点との差」と「標準偏差」の2 つです。「平均点との差」は説明不要でしょう。同じ90 点でも、平均点90 点のテストで取る90 点と、平均点50 点で取る90 点では意味がまったく異なる、ということを偏差値は反映しています。
 もう一方の「標準偏差」こそが偏差値を便利なものにする考え方です。これは、各点数と平均点との差が一人当たりどれぐらいなのかで算出されます。同じ平均点50 点のテストで取った90 点でも、平均点付近に多くの人が分布するテスト(試験A)で取った場合と、得点分布の広がりが大きいテスト(試験B)での90 点では意味が大きく違ってきます。
 次の2 つの場合を比べてみましょう。

試験A、B はいずれも平均点50 点ですが、同じ90 点であっても試験A では偏差値73.5、B では58.9 となります。標準偏差が小さい方が平均点との差が重く評価されるのです。極端な例では、受験者が全10 人でその内9 人が0 点のテストでは、たった1 点でも取れば偏差値は80 になります。

偏差値は子どもの資質を
表すものではない

最後にもっとも重要なことは、偏差値はあくまでも入試を突破するための目安にしか過ぎない、という点です。
 「偏差値が高いから僕は頭がいい。もう勉強しなくていいや」とか、反対に「私は偏差値が低いから、将来○○になる夢を諦める」といったことをお子さんが言うとしたら、偏差値という便利な指標が、一転して弊害となっています。
 偏差値は一人ひとりの個性や適性、夢や目標、意欲・関心を表す指標ではありません。仮に第一志望校に合格できなかったとしても、夢や目標を目指すことはできますし、いくら学生時代の偏差値が高くても、その後学び続けなければ良き市民となり良い仕事をすることはできません。偏差値に振り回されることなく、賢く使いこなして入試を突破してください。